いい人を演じてしまうと感じるのは子ども時代のトラウマが原因なのですか?
質問Q:子ども時代のトラウマが原因なのかもしれませんが、いい人を演じている自分がいます。誰にでも親切にする、それが自分なのだと思っていました。
回答A:よい人を演じてしまうという感覚は、ご自身でも無意識のうちに「親切な自分」をアイデンティティとして取り込んでこられた結果かもしれませんね。実は自身の内面を守るための防衛反応(サバイバル戦略)だった可能性に気づかれたことは、非常に大きな一歩だと思います。子ども時代のトラウマや環境が、どのようにして「過剰にいい人を演じる」性質を作り出すのか、その心理的なメカニズム(機序)について解説します。
心理的生存戦略としての迎合(フォーン)
心理学には、脅威にさらされた時の反応として、戦う・逃げる・固まる、の他に、迎合(Fawn)という第4の反応があると言われています。
- 機序: 幼少期に親が情緒不安定だったり、厳格すぎたり、あるいはネグレクト気味だった場合、子どもは相手の機嫌を損ねないことや、役に立つことで自分の居場所を確保しようとします。
- 結果: 自分の感情を後回しにして相手のニーズを察知する能力が異常に発達し、大人になっても波風を立てない親切な人を演じ続けるようになります。
自己犠牲による見捨てられ不安の回避
いい人でいなければ自分には価値がない、いい人でなければ人は離れていく、という強い恐怖心が根底にある場合があります。
- 機序: ありのままの自分(怒りや悲しみを持つ自分)を出すと、周囲から拒絶されるという学習がなされている状態です。
- 結果: 親切に振る舞うことで周囲との衝突を避け、一時的な安心感を得ようとします。しかし、これは「本当の自分」を隠しているため、親密な関係(特にパートナーシップ)においては、深い疲れや孤独感を招きやすくなります。
良い子という役割への固定化
家庭内でしっかり者や、手のかからない子という役割を期待されていた場合、その役割を演じることが自己肯定感の唯一の源泉になってしまうことがあります。
- 機序: 自分の本当の欲求を抑圧し、他者の期待に応えること(=いい人であること)が正解であると脳が深く記憶します。
- 結果: 自分の本音が自分でも分からなくなり、他者の顔色を伺いすぎることで、家庭内などのプライベートな空間でもリラックスできなくなることがあります。
現在の状況との関わり
単身赴任されているという現在の状況も、もしかするとこうしたいい人を演じる疲れや、それによって生じた本音でのコミュニケーションの欠如が、無意識のうちに関係性に影響を与えていた側面があるのかもしれません。
大切なポイント
いい人を演じているというのは、決してあなたが偽善者であるという意味ではありません。それは、あなたが厳しい環境を生き抜くために身につけた、とても健気で懸命な知恵でもあります。
まずは、今まで自分を守るために頑張って親切にしてきたんだなと、ご自身のその戦略を労ってあげてください。

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